皆さんこんにちは。永倉えみるです。今日は最近体験した不思議な出来事をお話ししますね。

　あれは約一ヶ月前の夏休み中のこと、一週間ほど夏休み中の学力強化補習を受けるのに登校していたのですが、その最終日にこの不思議な出来事は起こりました。

　補習中何気なく外を見ると、校門のところに人影が見えたんです。よく見てみると明日香ちゃんでした。こっちに向かって手を振っているので、えみりゅんも手を振り返しました。

「永倉ぁ、どうした？」
「えっ？いや、あの、その…」
「よそ見はいけないなぁ(笑)」
「はぁい。」

　あと１０分ほどで休み時間に入るので、その時に校門に向かおうと思い、とりあえずは補習に集中することにしたのです。

キーンコーンカーンコーン

（明日香ちゃん、何の用だろ？制服姿と言うことは、明日香ちゃんも補習なのかな？赤点の方の…なぁんてね。）

　休み時間になり校門の所に向かいましたが、明日香ちゃんはいませんでした。
　簡単な用事であればいつも萬屋であうときに話す人ので、わざわざ学校まで来ると言うことは、急ぎか重要な用件なはずですし、えみりゅんが明日香ちゃんに気づいていることは知っているはずなので、１０分やそこらの待ち時間で帰るとは思えません。

　ちょうど用務員さんが居ましたので聞いてみました。

「あの…ここに立っていた女の子は帰っちゃいましたか？」
「女の子？いや、ずっと居るけど誰も通らなかったなぁ…」
「えぇ？そんなはずは…」

　明日香ちゃんが立っていたところは、どこからも見渡せるところなので用務員さんが見落としたとも思えません。休み時間も終わりに近づいたので、一旦教室に戻ることにしました。

（まぁ…今日は萬屋で会う日だからその時で良いか…）

　でも、補習が終わり、いつものように煙草屋に向かい明日香ちゃんを待ちましたが、待てど暮らせど明日香ちゃんは現れませんでした。急なバイトのシフトが入ったとしても、連絡くらいは入れられるハズです。

　バイトが忙しいだけかもしれません。一応「ぴあきゃろっと」に電話を入れてみることにしました。

ｔｒｒｒｒｒｒｒｒ

「毎度ありがとう御座います。ぴあきゃろっとです。」
「永倉と申しますが、星野明日香さんお願いできますでしょうか？」
「あ、河合です。こんにちは。星野さんはねぇ…今日はシフトの日ではありませんが…」
「そう…ありがとりゅん。それじゃ。」

　明日香ちゃんのＰＨＳに電話を入れようも、電話番号をメモした手帳を忘れてしまったので、結局、その日は明日香ちゃんと連絡を取ることが出来ませんでした。

　でも、その日を境に明日香ちゃんと連絡が取れなっただけじゃなく、変な夢を見るようになったのです。
　最初は、明日香ちゃんが車に轢かれそうになる夢。次に一緒に歩いているときに明日香ちゃんのすぐ横に植木鉢が落ちてくる夢。

そして…

「ふにゅ？お花畑？」
「えみりゅ〜ん。こっちおいでよ。」
「明日香ちゃん。どこへ行くの、待ってよぉ〜」
「えみりゅ〜ん。」
「待ってぇ〜。はぁ…はぁ、追いつけない。」
「フフフ…どうしたの？」

　明日香ちゃんが、手を差し出してくれました。が…それまではお花畑だったはずのに、いつの間にかえみりゅんは崖っぷちに立っていたのです。

「(゜ー゜)ニヤリ」

ドンッ！

「えっ？」

　なぜこんな所にいるかを考える暇もなく、明日香ちゃんは不気味に笑いながらえみりゅんを崖から突き落としたのです。

『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ！！！』

（っ！………はぁ、はぁ……。………夢…か。嫌な夢ばかり続くりゅん…）

　だんだん内容がひどくなってくる夢の内容に対してえみりゅんの胸に不安がよぎりました。まさか明日香ちゃんの身に何か起きたのでしょうか？それとも…。翌日、"マイナ"さんから明日香ちゃんの家の住所を聞いて尋ねてみることにしました。

　ピンポーン

「はぁい。どなたですか？」

　明日香ちゃんのお母さんの声だ…。

「こんにちは。私、永倉と申しますが、明日香さんご在宅でしょうか？」
「………。」

　えみりゅんが明日香ちゃんのことを聞くと、表情が曇りました。

「あの…？」
「あぁ、ごめんなさい。明日香はねぇ…」
「えっ…（そんな。だって、あの日は確かに明日香ちゃんの姿を見たのに…）」

　実は、あの日、明日香ちゃんは補習のために学校に向かったのですが、自転車がパンクしていたために、バスで学校に向かったのです。でも、明日香ちゃんの乗ったそのバスは、交差点で横から飛び出してきた来たダンプとぶつかり何度か横転するという事故を起こしたのです。

　確かにその事故のことは知っていました。たしか、かなりの死傷者がでたとニュースで報道していましたから。

（まさか！？明日香ちゃん…）

　でも、明日香ちゃんは奇跡的に命だけは取り留めました。ですが、右腕を骨折、肋骨も２本折り、左大腿骨にヒビの上、意識不明の重体とのことです。

「病院はどこですか？」
「病院はね…司馬クリニックなの。」
「ありがとう御座います…。」
「あぁ、永倉さん。よかったら電話番号を教えていただけないかしら？集中治療室から移動したら連絡して上げるから。」
「ハイ！ありがとう御座います。……これです。」

　明日香ちゃんの入院している病院を聞いて、明日香ちゃんの家を後にしました。

　その夜、一通のメールが届きました。相手は女性だけのメーリングリストで知り合った美由紀ちゃんです。

「えみるさん、こんにちは。保坂美由紀です。

　えみるさんのお住まいの近くで大きい交通事故があったそうですね。通勤＆通学途中のバスが、横からきたダンプにぶつかって横転したと言う。
　えみるさんは大丈夫でしたか？

　実は、私の良く行く写真家さんのページにそのことが載っていました。

　http://www.apocalips.ne.jp/~button/index.html　です。

　ただ、事故現場をそのまま写した写真があります。それは、かなり生々しいので気分が悪くなるかもしれません。

　かしこ。

　美由紀ちゃんのメールを見てから早速当該サイトにアクセスしてみました。

「う゛っ！」

　一応は覚悟していましたが、やはり目を背けたくなります。なにせ、ガラス片のシャワーを浴びて血だらけになっていたり、開放性骨折や、断裂した腕とかがそのまま写っていましたから。

　……でも、何か変なんです。どこが…とは言えないんですが、「なんとなく」嫌な予感がするとしか。

　とりあえずは、美由紀ちゃんに無事の報告を兼ねたお礼メールと、同じメーリングリストで知り合っていろいろ交流のある、浅井真弓さんに私の疑問を伝えて寝ることにしました。

【第15話終わり】